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被災地での出会い(1)

「花柄のワンピース」

平成23年3月、東日本大震災の発生以来、主に福島県での動物救護活動に携わってきました。

幾度となく福島に通う中で、被災され避難生活を余儀なくされている多くの飼い主さんにお会いし、お話を伺う機会をいただきました。

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福島県浜通りに住み、海が見える自宅でドッグカフェを開いていたKさんは、地震が起こった後、海の水がぐんぐんと引いていくのを目にしました。

「津波が来る!」

あわてて家族と従業員と18頭の犬に1匹の猫を抱え、急いで避難しようと車に乗り込む
Kさんたちの目の前の道路には、亀裂が入り段差ができ始めていました。

必死の思いで悪路を走り、避難所にたどり着いたKさんたちは、後から到着した近所の方から「Kちゃんの家、津波で土台しか残ってないよ」と告げられました。

ドックカフェを出てから15分後のことだったそうです。

その後、知人を頼っていわき市に移動。
家もお店も失い、何か所かの避難先を転々としたKさんは、言葉に尽くせない苦労を重ね、二本松の岳温泉にドッグカフェを再建されました。

明るいKさんの人柄や、トリミングサロンを併設した居心地の良いドックカフェに惹かれ、たくさんのお客さんが訪れます。

地元の方だけでなく、浜通りにあったドッグカフェの常連さんだった方たちも、Kさんを応援し、新しいお店を訪ねてきてくださいました。

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震災から2年目の3月11日、浜通りから避難していた女性がお店に来てくださったそうです。

春らしい花柄のワンピースを着て、いつもと雰囲気が違います。

「ステキなワンピースだね」
Kさんが声をかけると、女性は訥々と話し始めました。

「娘と一緒に選んだワンピースなんだよ」

震災の少し前、「一緒に着ようね」と母子二人で選んだワンピースだったのです。

2年前のあの日に亡くなった娘さんを想い、「今日はこのワンピースを着ているの」そう話す女性に、Kさんはかける言葉が見つからなかった、と私に話してくださいました。

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Kさんを訪ねる度に、心に沁み入るお話を伺います。

ドッグカフェに来る方は、優しく受け止めてくれるKさんに想いを話すことで、弾けそうな心の風船から少し空気を抜き、また明日から続く生活に戻っていかれるのでしょう。

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私は動物の救護活動を通じ、多くの方と出会っています。

被災地では被災動物のことだけでなく、被災された方、避難されている方々の胸に溢れる想いに接する機会をいただきます。

私が一ボランティアとして活動に伺う、福島県動物救護本部の三春シェルターで、日々、犬や猫たちのお世話をしてくださっている獣医師も、スタッフの中にも、今もなお避難中という方がいらっしゃいます。

彼女らが作業をしながら動物たちにかける言葉の端々から、深い愛情が感じられます。

動物の救護活動に携わる私にとっては、いつかこのシェルターの動物たちがみんな、元のご家族や新しいご家族の下に卒業していき、無事にシェルターが閉鎖される日が来ることが、復興の証しの一つではないか、感じています。

スタッフのみなさんの生活が、落ち着きを取り戻し、故郷に帰れる日が来ることを心から願わずにはいられません。

もし、このコラムを読んでくださっているあなたの傍に空席があるならば、福島県三春シェルターで譲渡を待つ猫や犬たちのことを思い出してください。

大規模災害時の動物救護活動には、動物愛護や動物福祉の視点だけでなく、人に対する思いやりの気持ちも欠かせないことをしみじみ感じています。

アナイスではこれからも継続して、東日本大震災による被災地の支援を行っていきます。

アナイス代表 平井(池田) 潤子

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